
自分を愛する時間|夜の10分で心と身体をリセットする方法
一日の中で、「自分のためだけの時間」をどれくらい持てているでしょうか。
仕事や家事、育児に追われていると、目の前のことをこなすだけで一日が終わり、自分の気持ちや身体の状態に目を向ける余裕がなくなることがあります。
家族のことを優先し、周囲に気を配りながら過ごしているうちに、自分自身が置き去りになってしまうこともあるでしょう。
そんな毎日の中で、夜に訪れる静かな時間は、心と身体を自分のもとへ戻すための大切なひとときです。
長い時間を確保する必要はありません。
眠る前の10分を使って身体をほぐし、頭の中を整理し、ゆっくり呼吸するだけでも、一日の緊張を穏やかにほどいていくことができます。
特別な道具や準備も必要ありません。
毎日完璧に続けることを目指すのではなく、その日の自分に必要なものを一つ選ぶことから始めてみましょう。
夜の10分が、心と身体を整える時間になる
一日を過ごした身体には、自分で思っている以上に緊張が残っています。
長時間同じ姿勢で過ごしたことによる肩や首のこわばり。仕事や人間関係について考え続けたことで生まれる心の疲れ。明日の予定や、今日できなかったことが頭から離れない夜もあります。
身体は休もうとしているのに、気持ちだけが昼間の出来事の中に残っていることもあるでしょう。
眠る前に短い時間でも立ち止まり、「今日はここまで」と一日を区切ることで、活動の時間から休息の時間へと気持ちを切り替えやすくなります。
夜のセルフケアは、疲れを完全になくすためのものではありません。
今日の自分の状態に気づき、張りつめていた力を少し緩めるための時間です。
「今日もよく頑張った」と無理に思い込む必要もありません。
疲れていること、余裕がなかったこと、思うようにできなかったことも含めて、今の自分をそのまま受け止める。それだけでも、心には小さな余白が生まれます。
夜の10分でできる、3つのリセット習慣
これからご紹介するのは、身体、心、呼吸の順に、一日の緊張をゆっくりほどいていく方法です。
すべて行っても10分ほどですが、毎晩3つをこなす必要はありません。
身体が疲れている日はストレッチだけ。考えごとが多い日はノートに書くだけ。すぐに眠りたい夜は深呼吸だけでも十分です。
セルフケアが新しい義務になってしまわないように、その日の自分に合うものを選んでみてください。
1.3分間のストレッチで、身体のこわばりをほどく
まずは、一日を支えてくれた身体の緊張をゆっくり緩めていきます。
忙しいときや集中しているときは、無意識に肩を上げたり、歯を食いしばったり、呼吸が浅くなったりしやすいものです。
夜に身体を大きく動かす必要はありません。
痛みのない範囲で、呼吸を止めずにゆっくり伸ばしてみましょう。
椅子や床に楽な姿勢で座り、首を右側へゆっくり傾けます。肩が一緒に上がらないように意識しながら、首の左側が心地よく伸びるところで10秒ほど保ちます。
反対側も同じように行いましょう。
次に、両肩を耳へ近づけるように持ち上げ、息を吐きながら力を抜きます。そのあと、肩で大きな円を描くように、前後へゆっくり5回ずつ回します。
最後に立ち上がり、両手を頭の上へ伸ばします。
背中や脇腹が伸びる感覚を味わいながら、身体を左右へ小さく揺らしてみてください。立つことが負担になる日は、座ったまま腕を伸ばすだけでも構いません。
首や肩に痛み、しびれ、めまいなどがある場合や、通院中の症状がある場合は、無理に行わず、医師に相談のうえで実施してください。
身体が硬くても、きれいな姿勢をつくれなくても問題ありません。
大切なのは、形を整えることではなく、「ここが少し張っている」「この動きは心地よい」と、自分の身体の感覚に気づくことです。
強く伸ばしすぎず、痛みや違和感があるときは無理をせずに中止してください。
2.4分間のジャーナリングで、頭の中を整理する
身体を少しほぐしたら、頭の中に残っている思いや出来事を、ノートやスマートフォンのメモへ書き出してみましょう。
眠る前に考えごとが止まらなくなるのは、頭の中にあることを忘れないよう、意識が抱え続けているからかもしれません。
言葉にして外へ出すことで、すぐに答えが見つからなくても、「今日はここまで考えた」と区切りをつけやすくなります。
きれいな文章を書く必要はありません。
誰かに見せるものでもないため、思いついた言葉をそのまま書いてみてください。
何を書けばよいか迷うときは、次の3つを一つずつ振り返ってみましょう。
今日、少し心が和らいだこと
大きな出来事でなくて構いません。
飲み物がおいしかったこと。空がきれいだったこと。子どもの表情に思わず笑ったこと。仕事が一つ片づいたこと。
ほんの一瞬でも、自分の心が緩んだ場面を思い出してみます。
今日、自分がしていたこと
「褒めること」を探すのが難しい日は、評価せずに事実を書くだけでも十分です。
朝起きた。仕事へ行った。食事を用意した。誰かの話を聞いた。疲れている中でも一日を終えた。
当たり前に見えることの中にも、今日の自分が担っていたものがあります。
明日、少し楽しみにしたいこと
明日の大きな目標ではなく、小さな楽しみを一つ書いてみましょう。
好きな飲み物を買う。帰宅したら続きを読みたかった本を開く。お昼休みに外の空気を吸う。いつもより少し早く布団へ入る。
楽しみが思い浮かばない日は、「明日は少しゆっくりしたい」と書くだけでも構いません。
書くことが負担に感じられる夜は、ノートを開かなくても大丈夫です。
布団の中で一日を思い返したり、心の中で一つだけ言葉にしたりすることも、立派な振り返りになります。
大切なのは、無理に前向きな出来事を探すことではありません。
うれしかったことも、疲れたことも、今の気持ちも、そのまま認めるための時間として取り入れてみてください。
3.3分間の深呼吸で、意識を今へ戻す
最後は、外側へ向かっていた意識を、ゆっくり自分の内側へ戻していきます。
部屋の明かりを少し落とし、椅子や床に座るか、布団の上で楽な姿勢になります。
目を閉じても、閉じなくても構いません。
まずは、自分の呼吸が今どのくらいの速さなのかを観察してみましょう。
無理に深くしようとせず、息が入ってくること、出ていくことを静かに感じます。
少し呼吸を整えたいときは、鼻から4秒ほどかけて息を吸い、口または鼻から6秒ほどかけてゆっくり吐いてみてください。
苦しく感じる場合は、秒数に合わせる必要はありません。吸う息よりも吐く息を少し長くする程度で十分です。
これを数回繰り返しながら、肩やお腹の力が少しずつ抜けていく様子を感じてみましょう。
途中で考えごとが浮かんできても、追い払う必要はありません。
「明日のことを考えているな」「まだ今日の出来事が気になっているな」と気づいたら、再び呼吸の感覚へ意識を戻します。
何度それても構いません。
意識がそれたことに気づき、また戻る。その繰り返しが、マインドフルネスの練習になります。
呼吸を終えたら、温かい白湯やノンカフェインの飲み物を一口味わったり、ハンドクリームをゆっくり塗ったりするのもよいでしょう。
手の温度、香り、飲み物の温かさなど、今感じているものへ意識を向けることで、心も少しずつ夜の静けさへなじんでいきます。
夜のセルフケアを心地よく続けるために
この10分間は、自分を整えるための目標や課題ではありません。
日々の暮らしの中に、自分へ目を向ける小さな余白をつくるための時間です。
そのため、毎日続けることよりも、無理なく戻ってこられる形にしておくことが大切です。
一つだけ選ぶ
疲れている夜に、ストレッチ、ジャーナリング、呼吸法のすべてを行おうとすると、それ自体が負担になることがあります。
今夜は肩を回すだけ。
今日は一行だけ書く。
布団の中で一度だけ深く息を吐く。
それくらいの小ささから始めてみましょう。
「これだけでは意味がない」と考える必要はありません。
自分の状態に気づき、そのときにできることを選ぶ行為そのものが、自分を大切にすることにつながります。
始めるきっかけを決めておく
習慣を続けやすくするためには、時間を厳密に決めるよりも、毎晩行っている行動と結びつける方法があります。
歯磨きを終えたら肩を回す。
スマートフォンを充電したらノートを開く。
布団へ入ったら、ゆっくり3回呼吸する。
このように、すでにある習慣のあとへ小さな行動を加えると、特別に意識しなくても思い出しやすくなります。
落ち着ける環境をつくる
夜の時間を心地よくするために、部屋の環境を少し整えるのも一つの方法です。
照明を少し暗くする。テレビやスマートフォンから少し離れる。静かな音楽を小さく流す。好きな香りを楽しむ。
たくさんのものを用意する必要はありません。
自分が「これから休む時間に入る」と感じられる小さな合図を一つ見つけてみましょう。
キャンドルを使う場合は、眠る前に必ず火を消し、安全に十分注意してください。香りに敏感な方や小さなお子さま、ペットがいる家庭では、無理に取り入れず、照明や音など別の方法を選びましょう。
できない日は、休むことを選ぶ
疲れ切って、そのまま眠ってしまう夜もあります。
家族の事情や仕事の都合で、自分の時間を持てない日もあるでしょう。
そのような日に、「今日もできなかった」と自分を責める必要はありません。
何もせず眠ることが、その日に最も必要なセルフケアである場合もあります。
習慣が途切れても、失敗ではありません。
また思い出した夜に、できることから始めれば十分です。
続けることよりも、自分の状態を無視しないことを大切にしてみてください。
自分を愛することは、自分の状態に気づくこと
自分を愛するという言葉を聞くと、自分をいつも肯定し、前向きな気持ちでいなければならないように感じることがあります。
けれども、自分を愛することは、どのような自分も好きになることだけではありません。
疲れていることに気づくこと。
今日は余裕がなかったと認めること。
誰かに助けてほしいと思っている自分を無視しないこと。
今は休みたいという身体の声を聞くこと。
そうした小さな気づきも、自分を大切にする行為です。
一日の終わりに10分だけ立ち止まることで、昼間は見過ごしていた自分の状態に気づくことがあります。
身体が思っていた以上にこわばっていたこと。
心の中に言葉にならない疲れが残っていたこと。
あるいは、忙しい中にも小さなうれしさがあったこと。
その一つひとつに気づくたび、外側の出来事へ向かっていた意識が、少しずつ自分のもとへ戻ってきます。
おわりに|今夜、自分へ10分を返してあげる
夜の10分で、一日の疲れがすべてなくなるわけではありません。
抱えている悩みがすぐに解決するわけでもなく、毎日穏やかな気持ちで眠れるとは限らないでしょう。
それでも、身体を少し伸ばすこと。
心に残っていることを一行書くこと。
ゆっくり息を吐くこと。
その短い時間が、一日中さまざまな役割を担っていた自分へ戻るきっかけになります。
自分のための時間は、何かを達成するためだけにあるものではありません。
ただ休むこと。何もせずにいること。心地よさを味わうことにも、大切な意味があります。
今夜は、その日の自分に合うものを一つだけ選んでみてください。
肩をゆっくり回す。
今日の出来事を一つ書く。
布団の中で長く息を吐く。
ほんのわずかな時間でも、自分の状態へ静かに目を向けることができれば、それで十分です。
一日の最後に、自分自身へ「おつかれさま」と伝えるような気持ちで、心と身体を休息の時間へ戻してあげましょう。
参考資料
睡眠対策(健康づくりのための睡眠ガイド2023) – 厚生労働省 https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/kenkou/suimin/index.html